障害とアートに関するメディアライブラリー

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障害のある人の老いや病を支え続けるためにニュース

高齢化する障害のある人の暮らしに関する調査研究

1998年、障害のある人が自分らしく暮らせる場所として福祉ホームコットンハウスがオープンしました。コットンハウスは必要なケアを受けながら生活できる場所でありますが、オープン当初は医療的なケアが必要な人が生活することは想定していませんでした。

オープン後20年を経過するなかで、入居されている方々が年齢を重ねるにしたがって、医療との連携が必要なことが出てきました。10年ほど前から、入居者の方が人工肛門(ストマ)を造設されたり、人工透析を始められたり、経管栄養による栄養摂取をされるようになりました。

医療的なケアが必要になったり、年齢を経るに従って体の状態がかわったりすることによって、ケアの内容が大きく変わることに、ご本人はもちろん、支える人たちは戸惑いを感じ、混乱することもありました。その試行錯誤を記録し、いろいろな人と共有することによって、障害のある人の老いや病を支えることの一助になるのではないかということが、この調査研究に取り組んだきっかけでした。

研究概要

事例から学ぶ
コットンハウスに暮らす入居者2名に関する、本人と支援者へのヒアリング調査を行いました。これまでの生活歴や支援者のヒアリング調査などをとおして、コットンハウスでの試行錯誤を記録しました。

研究会の開催
「脳性麻痺と二次障害」「暮らしの場での高齢化への対応と看取り事例」「障害のある人が高齢化に伴い直面する権利擁護的側面での課題について」「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)について学ぼう~障害のある人の暮らしの場でのACPについて~」の4つの研究会を行いました。

施設見学
高齢化問題に直面したり、医療との連携に取り組んでいる3か所の施設を訪問し、ヒアリングを実施しました。

調査研究を実施して

障害のある人の体、暮らしの状況はとても多様です。同じ状況になることはほとんどないと思います。それでも、個別の事例から学ぶことはたくさんあることに気づきました。

毎日現場で働いているスタッフからは、「毎日やっているといつのことだったのか覚えていないこともたくさんあって、まとめることで思い出したこともある」「コットンハウスのスタッフやパートスタッフの方にも読んでもらって感想を聞きたい。医療的ケアに対応するようになったときに議論はしたと思っているが、どこまで話を聞けていたか。その時々に精一杯できちんと話を聞けていなかったかもしれない」などの感想が寄せられました。

今後、ますます高齢化がすすむコットンハウスのなかで、入居者の方の生活をどのように守るかを改めて案が得る機会になりました。また、研究会を実施することで、障害のある人の暮らしを支える課題から、社会の問題を見直すきっかけをつくることができました。

障害のある人やその生活は人それぞれです。ケアの仕事は、障害のある人たちの日々の暮らしを支えるとともに、その暮らしからいろいろなことを学ぶことができます。私たちの取り組みに興味をもっていただいた方々と、情報交換など学び合う機会をつくりたいと考えています。ぜひご連絡ください。

報告書をご希望の方へ

調査研究報告書をご希望の方は、返信用切手(210円分)を同封の上、下記事務局まで郵送にてお申込みください。

〒630-8044 奈良市六条西3-25-4
社会福祉法人わたぼうしの会 たんぽぽ生活支援センター
※「調査研究報告書希望」とご記入ください
TEL. : 0742-40-1030
Email: genki@popo.or.jp

助成:日本社会福祉弘済会

「市民教育としてのサービス・ラーニング」論文

(日本福祉教育・ボランティア学習学会年報 第10号 2005年12月)
川上文雄(奈良教育大学教員)

授業としておこなった障害者アートに関わる二つの活動を考察。民間ギャラリーでの展覧会では、学生が作品を選び、感想を添えて展示した。みずから表現者となりながら障害のあるアーティストと交流し、ともに楽しむという活動を通じた大学生の障害者理解の深化、そして、ボランティアに関する意識の深化(変化)を論じた。身体介助とは異なる活動を可能にする障害者アートがボランティア学習にとってもつ意義を明らかにした。
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「障害者アート」と「共同性」―ある知的障害者施設の創作現場から―論文

(現代文明学研究:第6号(2004):372-387)
岸中聡子
外部リンク

『アール・ブリュット/アウトサイダー・アート』をこえて ――現代日本における障害のある人びとの芸術活動から論文

 (『文化人類学』、74巻2号(2009)215-237頁)
中谷和人(京都大学大学院博士課程)

本論文は、現代日本で障害のある人びとの芸術活動を展開する二つの施設をとりあげ、その対外的な取り組みと実践の状況を文化人類学的な視点から検討する。 一方の施設では、「アール・ブリュット」「アウトサイダー・アート」といった美術界の言説を戦略的に利用することで通所者の収益確保が図られる。もう一方の施設では、こうした既存の枠組みに拠りきらず、自らのアートを自らで構築しようとする運動が進められる。 いずれの施設においても、作品=モノやその生産をめぐる相互行為そのもののなかに、固定的な関係をすり抜け、それを変容させるような契機が潜在することを認めたうえで、これら関わりあいの過程が当事者の生の文脈にいかに接合されているかを解明する。

アートする作業所から生まれた『雷バッグ』コラム・エッセイ

(『花ぎれ』、Vol.61(2009)12-15頁)
岸中聡子
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