第29回わたぼうし橿原コンサート 作詩の部 入選作品

作詩の部 入選作品(3作品) *詳しい募集内容はこちら

◯「カチン!すとん」(作詩:みるきい・奈良市)

◯「16才の烙印(らくいん)」(作詩:井上和哉・高市郡)

◯「私の一日」(作詩:山口広子・奈良市)

 

カチン!すとん! (作詩:みるきい・奈良市)                    

小さい身体で車椅子

いやでも人目につくのよね

小さい子供がよってくる

「どうして小さいの」「どうして歩けないの」

こんな事 しょっちゅうあるん

もう 慣れてしもた

 

けど 親が騒ぎすぎ

 

ある日のデパートで小さな女の子がよってきて

「どうしてこんなモンに乗っとるの?」

説明しかけたその時だった

いきなりすっ飛んできたのは、なんとギャルママ

子供のほっぺたをキュッとつまんで

「そんなかわいそうな事、言うんやないのっ!」

それから、財布からお札を出して子供に握らせ

「これあげて、ごめんなさいっていいなさいっ!かわいそうに・・・」

 

思いっきり カチン!と来て 「なんのマネですかっ!」

声が大きく キツうなった

周りの人が何人か振り返る

親子はそそくさと行ってしまった・・・

 

こんな事もあったよ

父方 母方 合計14人の従姉弟達

小さいころから キャーキャーと騒ぎ合った仲

20歳も半ばの頃やった

父方の従弟の一人に ふっと訊ねた

 

「従弟として 障害持っている私のコト どう見てる?」

「どう見てるって 今更聞かれても・・・」

「別に 見慣れてしもてるモン・・・」

すとん 心の中で何かが落ちた

 

一瞬 サッとさわやかな風が心の中に吹いた

 

車椅子で小さい身体

これが私

たまたま授かった 目立ちすぎるアイデンティティー

 

 

16才の烙印(らくいん) (作詩:井上和哉・高市郡)      

 

果てしなく続くこの道は

時として追い風にあおられて走ってゆく

寂しさは癒えないけど

君となら 走れるかな?

 

本当は記念日だね 僕らが生きて行くこの道は

果てしなく続く 生きている証しだね

君や彼らを探してゆく

赤い夕日を眺め 烙印の季節がやってきた

水平線の向こうには

 

いま誰も居ない この地を離れ

遠き永久(とわ)へ足をのばし

こころと体が示した あの日の烙印

あの日の君にさようなら

あの日の烙印にさようなら

 

いつまでも 何度でも言ってやるさ

 心は委(ゆだ)ねられないけど

僕は君が大好きだから 決してあの烙印は

間違いじゃなかった

 

君は いつかたびだつだろう

決してあきらめない 病気が治ってもいま

さようならは言わない でもあの烙印にさようなら

心の病をさらけだして いまこの場所で!

 

お願いだから もう二度と治らないで

1年経っても10年経っても

さよならを話すたび こころは孤独になってしまう

烙印にさようなら 心からさようなら

何度でも君にありがとう言うよ

 

もう一回 もう一回

もう一回 もう一回

 

私の一日(作詩:山口広子・奈良市)        

静かな朝が 今日も来ます

私はベッドの上で 目を覚ます

朝の八時前になると

私たちをみてくれるヘルパーの足音が バタバタと聞こえます

八時になったら 自分たちの担当の部屋に入ります

 

「トントン…」で 今日は誰かなと思います

私は二時間の間で

洗濯 ゴミ捨て いろいろなことをやっています

二時間は パッと流れていきます

出勤する時 玄関はにぎやかです

私は いたずらをするのが好きです

ついついヘルパーの靴を 隠してしまいます

 

仕事がおわる時間に

ヘルパーがゾロゾロと私たちを迎えにきます

おばちゃんや姉ちゃん 変な格こうの人が迎えに来ます

Gパンやゾウリ・・・

 

三時半からは 私達の自由な時間です

テレビを見たり CDを聞いたり

パソコンやいろいろなことをしています

パン屋の兄ちゃんが 私の家にむかえに来てくれます

どんなパンがあるかなあと思っていきます

ヘルパーがバタバタ走って 仕事をやってます

私はこころの中で落ち着いてくれ と思っています

もしも怪我をしたら 私たちを誰が見てくれるのかなと思います

姉ちゃん おばちゃん 晩までお疲れ様です 

おやすみなさい