臨床するアート2012 東京セッション第1回 神田美子さん
「いのちを育む時間ー京大病院小児科での活動から」
2012年11月1日(木)、第1回トークセッションのゲストは、
京都大学医学部付属病院小児科ボランティアグループ「にこにこトマト」代表の神田美子さん。
娘さんの入院がきっかけで初めて知った、「病院」という世界。
突然の事態にいっぱいいっぱいだった当時、
娘さんの口から出た、「ごめんね」という言葉。
その時、「病気になって辛い目をした子に謝らせてはいけない!」と
自らを奮い立たせた想いが、「にこにこトマト(以下、にこトマ)」の誕生につながりました。
それから17年。
神田さんの想いは、たくさんの人々を巻き込み、にこトマは「幸せチーム」へと成長し、
今に至っています。
今回のご発表のテーマは「えがお」
「えがお」、と聞くと、にっこり笑った顔を思い出しますが、
様々な事情で「見た目」にそれを創ることが難しい場合もあります。
でも、そんな状況でも、楽しい遊びは、どんな小さな可能性も見逃さず、
「えがお」を引き出します。
終末期であっても、足でリズムを取ることで表す「えがお」もあります。
脳こうそくで表情を失っても、
楽しい遊びは時に、「えがお」を復活させる力になります。
病院なんか大嫌い!痛いことする先生や看護師さんなんか大嫌い!と
絶対に笑わなかった子どもでも、楽しいとつい、「えがお」になっちゃいます。
「心が笑顔」も「えがお」――私たちは日ごろ、「当たり前の常識」と思っていることや、
目に見えるもの、形が確かなものに目がいきがちですが、
もしかすると、大切なものをたくさん見落としているかもしれません。
子どもにとって、遊ぶことは生きること。
だから、特別なものではなく、日常にあふれていたい!
そして、病気だからあきらめるのではなく、病気だからこそできることを見つけたい。
そうやって、可能性をたくさん作ることで、どんな状況のどんな子どもであっても、
「えがお」の可能性は広がります。
そんな神田さんのあったかい想いが、彼女の素敵な「えがお」と共に
部屋いっぱいにあふれた時間でした。
そして、トークセッションの最後には、
会場のみんながすっかり「幸せチーム」の一員になっていました。
それは、子どもたちと一緒に周りも全力で楽しんで、
みんなが「幸せチーム」になる!というにこトマの世界そのもののようでした。
先日、にこトマは、子どもの病気や病院と直接関係のない方々にも、
病気の子どもたちの、バラエティ豊かな生き生きした姿を知ってもらいたいと、
京都のホテルで展示会を開催されました。
どこの書家の作品!?、どこのアーティストの作品!?と大好評だった作品の数々は
現在、京大病院に飾られているそうです。
今回の神田さんのトークを逃してしまった方も、
まだA/A galleryにたくさんの作品が飾られていますので、
子どもたちの「えがお」あふれる作品に直接触れて、
自分の中の「えがお」も引き出されてみてはいかがでしょう?
(報告:李永淑/帝京大学医療共通教育センター非常勤講師)