2011年11月18日(金 )19:00~
連続トークセッション「臨床するアート 2011」、第4回「時間と空間を届けるアートワークショップ」を開催しました。
話題提供者は美術家の中津川浩章さん。
国内外で個展やグループ展を多数開催されている中津川さんですが、40代になってから美術館、大学、養護学校などでワークショップも多く行うようになったそうです。また、障害者施設・工房「集」(埼玉県川口市)アートディレクタ―も務めています。
今回は、東日本大震災の被災地でのワークショップの報告から話がはじまりました。
被災地で一回目のWSを行ったのは、5月はじめとのこと。NPO法人芸術資源開発機構(ARDA)の活動の一貫でした。
大きな紙をひろげ、どんどん描いていく。「長い線をひく」というワーク。
みんなで同じ紙に描いていくことにより、線が重なり、色が重なっていきます。
途中、中津川さんが音を鳴らし、感じるリズムや音を表現してもらうことも。
これは、日常から少し離れ、自分のプリミティブなものに触れる、体を解放させることを意図したワーク。
*壁に展示されているのは、WSで子どもたちが制作した作品。
中津川さんは線をひくことで、自分の体や存在を肯定的にとらえることができるのではないかと言います。
WSは、自己肯定感、生きる力を自分自身で得るプロセスであり、それは自分が画家として活動してきたことと重なる、と。
たとえば、保育園でのWS、参加者である5歳くらいのこどもたちも、最初は「これでいい?」という感じで、求められているものを探りながら描いているそう。でも、どこかでスイッチが入ると、わーっと主体的になっていく。自分で「美しさ」を発見していく。その、プリミティブなものを発見していく様子に、中津川さん自身も感動し、力をもらっているとのこと。
もちろん、毎回のWSで必ずそういう瞬間が訪れるとは限らない。でも、そこを目指して毎回真剣勝負のWSをしているそうです。
また、今年で15年になる工房集との取り組みのこと、養護学校などでのWSのことにも話はおよびました。
参加者の方々にも、福祉施設などで表現活動に取り組んでいる方、取り組みたいと考えている方が多く、具体的な質問がたくさん出ていました。
それらに丁寧に答えるなかで、中津川さんが「アート」というか、人間の表現活動が、いま、とても大切だと感じている。その人が声を出しているということや、一本の線をひくということのリアリティが重要で、僕らにとって、いまこそ必要なものなのではないか、と話されていたことが印象的でした。
震災以前も、震災以後も、変わらず必要とされていること。それが、この大きなきっかけにより、顕在化してきたにすぎないのかもしれません。 みえてきたものを、きちんとみすえていきたいと思います。
(報告:井尻貴子)