エイブル・アート・ムーブメントは日本だけではなくアジア各都市、世界に広がっています。そのなかでも特にここ数年、韓国との交流が増えています。
きっかけは2004年にソウルと奈良で開催された「障害者アート」日韓シンポジウム。ここに参加した牧師、チャン・ビョンヨンさんがたんぽぽの家の取り組みに刺激され、韓国・水原(スウォン)で障害のある人の創作活動や地域の文化交流の拠点となる「エイブル・アート・センター」の構想を掲げました。チャン牧師はじめスタッフがたんぽぽの家に滞在して研修を受けたり、2009年9月の「アジア太平洋わたぼうし音楽祭」の開催、同時期の「エイブル・アート・フォーラム」開催の運営にあたるなど、ムーブメントの理解と普及に貢献いただいています。
アートリンク・プロジェクトの
作品『幸せなお化け屋敷』
同時に、「エイブル・アート・センター」が建設されている地域、京畿道(キョンギド)を拠点として活動している京畿文化財団もエイブル・アートに関心を示し、2009年7月にはたんぽぽの家と共同で「アートリンク・プロジェクト」を開催しました。
アートリンクの詳細な
ドキュメントを掲載したカタログ
京畿道に在住しているアーティスト5人とキュレーター、事務局スタッフが約3週間たんぽぽの家に滞在し、たんぽぽの家アートセンターHANAの障害のある人たちとともに共同で創作活動をしました。ここで生まれた作品やドキュメントをまとめ、2009年11月にナム・ジュン・パイク・アートセンター(京畿道)にて展覧会を開催しました。
『生きのびるためのアート 日韓展』
ジュ・ヨンエさんの作品
『生きのびるためのアート 日韓展』展示風景
そして、今年2010年、京畿道の精神障害のある人のサポートセンターを統括している京畿広域精神保健センターとのコラボレーションが実現しました。日韓の精神障害のある人の表現を中心に、京畿道13ヵ所の会場を巡り、8月には東京の「アーツ千代田3331」にて展覧会「生きのびるためのアート 日韓展」および「病と人間の文化フォーラム」を開催しました。
自らのなかにある病を見つめ内へ向う作品もあれば、思い切り開放される作品もあり、シンプルながら各作品とじっくり向き合える空間が生まれました。
一連の交流の中で感じるのは、交流したアーティストやキュレーターが、エイブル・アートを「障害者アート」としてだけではなく、「社会芸術運動、市民芸術運動」として捉えているということです。エイブル・アート・センター代表のチャン牧師によると、過去の戦争や革命において詩人が重要な役割を果たしたという、韓国の市民運動の歴史が影響しているといいます。詩のもつ力を信じ、共生を実践する。エイブル・アートの源流である「わたぼうし」のコンセプトに通じます。
結果として、アートと社会のつながりを問う、日本ではできないようなユニークな取り組みや「病と人間の文化」といった、人間の存在の根幹にかかわる深い議論が交わされています。
エイブル・アート・ムーブメントは日本だけではなくアジア各都市、世界に広がっています。そのなかでも特にここ数年、韓国との交流が増えています。
きっかけは2004年にソウルと奈良で開催された「障害者アート」日韓シンポジウム。ここに参加した牧師、チャン・ビョンヨンさんがたんぽぽの家の取り組みに刺激され、韓国・水原(スウォン)で障害のある人の創作活動や地域の文化交流の拠点となる「エイブル・アート・センター」の構想を掲げました。チャン牧師はじめスタッフがたんぽぽの家に滞在して研修を受けたり、2009年9月の「アジア太平洋わたぼうし音楽祭」の開催、同時期の「エイブル・アート・フォーラム」開催の運営にあたるなど、ムーブメントの理解と普及に貢献いただいています。