三井 啓吾(やまなみ工房所属、エイブルアート・カンパニー登録作家)
ぶれない人
「さかな」 1994年 クレパス、紙
「コーヒー」1997年 クレパス、紙
「まる」 2004年 クレパス、紙
「四角」 2003年 クレパス、紙
「やまなみ工房での制作風景」
3?4歳頃から絵を描きはじめ、暇さえあれば何かを描いていたという。
ペンを持ったとたん、紙のサイズではおさまらず、家中の壁や家具に描きはじめた。
以来自分の世界を描き続け、2,000枚を超える膨大な作品を生みだしている。
徒歩と電車を乗り継ぎ、草津市の自宅から隣の甲賀市にある「やまなみ工房」に毎日通う。
創作活動を主とする「ころぼっくる班」に所属し、お気に入りの定位置に座り、自分のペースを保ちながら創作の日々を過ごしている。
鳥、魚、電車、風船、傘、植物、動物、好きな食べ物など、身近にあるものを描く。
とても明快で記号的なモチーフを描くかと思うと、ひたすら自分の欲しい物を単語で羅列したり、ある時は何をモチーフにしているのかもわからないような表現が強烈な色合いと形で出現したりする。
即興的に見えるが、実は三井さんのなかではそれぞれ分類されており、ある種の「型」としてパターン化できる。
何を描いているのかは本人にしかわからないという。
鮮やかな色彩を嬉しそうに紡ぎだす姿が印象的である。
創作の合間には誰もいないアトリエを見回り、部屋の中の机や創作道具を仔細に観察する。
他の人の作品と自分の作品を見比べることもあるが、その割には三井さんのなかにある表現の「確固たる芯」はぶれることがない。
豪快に画面全体を塗りたくる。
いつまで続くのかと思わせながら、全体像はしっかりと頭の中にあり、唐突に周囲のスタッフに「終わり!」と作品の完成を告げる。
その表情には一点の雲りもない。
やまなみ工房の施設長の山下完和さんは、もともと内職が中心だった工房で、この三井さんの晴れ晴れとした表情を見た時に、三井さんが絵を描ける環境をつくろうと思ったという。
それが数々の名作を生み出し続けるアトリエ「ころぼっくる」のはじまりの物語である。
好きな食べ物を描いたり、座る椅子の位置を確認したり、机の感触をゆっくり確かめたり、噛み締めるようにご飯を食べたり、慈しむように自分の手やクレバスを眺めたり……。
どれも等しく大切なこと。
三井さんにとっては描くことと日々を過ごすことが隔たりなく共存している。
それはどの場面でも見せる満面の笑みによって私たちに伝わってくる。
やまなみ工房からの帰り道、お気に入りのお店を覗きながら早足で商店街を歩く姿は、ぶれない人がぶれない日常を生きる楽しさを教えてくれる。
この秋、三井啓吾さんのご実家で展覧会を開催します!
ろうきんグッドマネープロジェクト エイブル・アート近畿2010
ひと・アート・まち滋賀 明日へのチカラ
2010年10月15日(金)~31日(日)、草津本陣商店街周辺にて、近畿労働金庫とたんぽぽの家が2000年から取り組んでいるコミュニティ・アートプロジェクトを開催します。
メインは、三井啓吾さんのご実家(旧『フードショップみつい』)を舞台にした展覧会です。いまは閉店したフードショップの記憶と、三井さんの作品、そして日常のドキュメントのコラボレーションです。
日常空間において、描くことと生きることの境を問う実験的な展示になります。ぜひご来場ください。
詳細はこちらまで
出展歴
グループ展
- 1991年
- 信楽陶芸祭「土は唄う」(滋賀)
土と色(京都/京都市美術館) - 1992年
- 落穂寮との合同展(東京)
- 1993年
- 「太陽と風と土と」(滋賀/スーパーJOY)
やまなみ共同作業所作品展(滋賀/大津NHKギャラリー)
土と色(京都/京都市美術館)
あふれる希望の芸術展(滋賀/滋賀県立近代美術館)
自主企画展(滋賀)他 - 1994年
- 「やぁ」(東京)
やまなみ共同作業所・第二びわこ学園・かいぜ寮合同展「湖のシンフォニー」(滋賀)
企画展(神奈川/横浜呉服屋)
あふれる希望の芸術展(滋賀/滋賀県立近代美術館)
合同展(東京/ポレポレ座ビル)他 - 1995年
- 土と色(京都/京都市美術館)
あふれる希望の芸術展(滋賀/滋賀県立近代美術館) エイブル・アート・フェスティバル(大阪/ATC) - 1996年
- エイブル・アート96(大阪/大阪国際交流センター)
三井啓吾個展(東京/ギャラリー青羅)
「太陽と風と土と」(神奈川/ギャラリー)他
- 1997年
- 優しいかぜにつつまれて vol.1(京都/MDカフェ)
- 1998年
- VIVIRA~命のはじまり(東京/ベネッセ・コミュニケーション・ギャラリー)
アートナウ98 ほとばしる表現力(兵庫/兵庫県立美術館) - 1999年
- このアートで元気になる エイブル・アート99(東京/東京都美術館)
アートスクランブル99(愛知)
ドリームアート99(神奈川)
エイブル・アート展(群馬)
ヘルスケアーアート東海(三重)
偶偶展(京都/法然院)
2 able persons (三重/30ギャラリー) - 2001年
- エイブル・アート近畿 ひと・アート・まち京都(京都/MDカフェ)
- 2002年
- 西から来た妖精たち(栃木/もうひとつの美術館)
三井啓吾展(奈良 /AXE OBJE)
- 2003年
- ぼくの色・私のカタチ(三重/宮川書店、伊賀上野城ギャラリー)
- 2004年
- NEW FACE(京都/アートスペース虹)
やまなみ工房の作家達(滋賀/布庵、奈良/CHIRORI)
ぼくの色・私のカタチ(東京/マダムブロッコリー) - 2005年
- 結~you 湖国からの贈り物(東京/トリープ)
スーパーピュア(神奈川/ザ・イム)
滋賀カラー(滋賀/ボーダレスアートギャラリー NO-MA)
- 2006年
- 土と色(京都/京都市美術館)
ユートピアの世界へようこそ~何処にもない場所への行方(栃木/M-style store)
アートブリッジ(宮崎/喫茶ギャラリー創・ウインドファーム)
土と色(東京/世田谷美術館) - 2007年
- 日本21世紀土偶と祭器 やまなみ工房と陶芸家の出会いの喜び(栃木/栃木笠間芸術センター)
作品掲載等
- 1991年
- 全国共同作業所連絡会「仲間のうた」カレンダー表紙(以降4年連続採用)
- 1992年
- 滋賀県スペシャルスポーツカーニバル ポスター
あふれる希望の芸術展 ポスター - 1996年
- 猪木浩平著・本栖浩司編『ポピパの話』(燦葉出版)表紙
- 1998年
- 大同生命「社報大同」表紙
- 1999年
- アートスクランブル ポスター
魂の芸術家たちの現在(群馬) ポスター
水川史生氏プロデュースカレンダー「FunnyDays」 - 2000年
- 朝日新聞全国版 挿画
甲賀郡人権センター「あすぱる」(1-5号)表紙
「月刊経団連」表紙
バリアフリーアート日本英国 2000年カレンダー - 2001年
- 雑誌「わが人生日本点字図書館」本間和夫著 表紙
- 2004年
- 大阪赤十字病院機関紙「ビリーブ」表紙画(年4回)
バリアフリーアートサミットカレンダー
エイブル・アート近畿 ひと・アート・まち和歌山 ポスター - 2005年
- もうひとつの美術館パンフレット
バリアフリーアートカレンダー - 2007年
- 城南電器工業所2007年カレンダー
賞歴
- 1994年
- ワンダー・アート・コレクション入選
- 2000年
- バリアフリーアートサミット銀賞
- 2001年
- かんでんコラボアートコンテスト21入選
- 2007年
- Art Challenged Project 2007(中日障害者芸術展)入選