『アール・ブリュット/アウトサイダー・アート』をこえて ――現代日本における障害のある人びとの芸術活動から

 (『文化人類学』、74巻2号(2009)215-237頁)
中谷和人(京都大学大学院博士課程)

本論文は、現代日本で障害のある人びとの芸術活動を展開する二つの施設をとりあげ、その対外的な取り組みと実践の状況を文化人類学的な視点から検討する。 一方の施設では、「アール・ブリュット」「アウトサイダー・アート」といった美術界の言説を戦略的に利用することで通所者の収益確保が図られる。もう一方の施設では、こうした既存の枠組みに拠りきらず、自らのアートを自らで構築しようとする運動が進められる。 いずれの施設においても、作品=モノやその生産をめぐる相互行為そのもののなかに、固定的な関係をすり抜け、それを変容させるような契機が潜在することを認めたうえで、これら関わりあいの過程が当事者の生の文脈にいかに接合されているかを解明する。