「わたぼうしコンサート」は、障害のある人たちの心を歌うコンサートです。障害のある人たちが書く詩は、私たちが失いがちな「生きる強さ」「心のやさしさ」「いのちの尊さ」などがあふれています。こうした思いをメロディーにのせて歌い、社会の理解と共感を深めようと、全国各地で開催されています。
このコンサート誕生のきっかけは、詩を書くことの好きな障害のある子どもとアマチュアの音楽グループ「奈良フォーク村」のメンバーとの出会いでした。生きることの喜びや哀しみ、やさしさにあふれた詩を、奈良フォーク村のメンバーがつくるメロディーにのせて、1975年4月、はじめてのコンサートを奈良県文化会館大ホールで開催しました。
翌年、全国の障害のある人たちの詩にも光をあてようと「全国わたぼうし音楽祭」を開催しました。スポンサーもいない、スターもいないこの音楽祭は、たくさんのボランティアに支えられ、1991年からは障害のある人たちの夢や願いを包み込み、「アジア太平洋わたぼうし音楽祭」として旅立ち、2年に1度、アジア・太平洋各都市で開催されました。
「わたぼうしコンサート」という新しいかたちの運動は、これまでの福祉に対する暗いイメージを一新し、障害のある人たちの「文化」に光をあてるきっかけをつくりました。また、それまで障害者問題に無関心だった人たちの間で、障害のある人への意識が高まり、さまざまなボランティア活動が生まれてきました。しかし、何といっても大きなことは、社会の無関心さに絶望を感じていた障害のある人たちが、同じ社会の仲間として受け入れられ、また、その未知なる可能性を評価してくれる人たちがいることを知ったことです。それは、生きる勇気となり、たくさんの障害のある人たちが社会参加を果たしていきました。
そしてわたぼうし音楽祭は2015年8月、40周年という記念すべき回を迎えます。