第44回わたぼうし音楽祭 作詩の部入選詩一覧

アイリス
作詩:akemi(奈良市・33歳)

「傷ついた分だけ 優しくなれる」と 信じていた
そうでありたいと願っていた
誰も傷つけたくなかったし もう 誰にも傷つけられたくなかった
なるべく ひとが 傷つかないように 当たり障りのないように
なるべく優しく 接してきた「つもり」だった けれど
そうすることで 自分を守っていただけだった
どんどん本音は云えなくなって 愛想笑いだけ板についた
ひとを信じることができないから 誰のことも愛することができない
あたしは 誰も愛してはいけなかった それなのに
愛してしまった 或いは 愛だと信じたかった
優しいひとだった
あなたの優しさを 信じることができなくて
あなたをただ苦しめているだけの自分に苛立ち
愛がなにかもわからなくて 自分の身体を傷つけた
あなたはとても悲しい瞳をして
そのとき初めて 気がついた

「傷ついた分 優しくなれる」なんて ただの思い上がりだった
あたし 誰のことも傷つけたくなかったのに
いちばん 大切なひとを傷つけていた
自分を守ることだけに必死で あなたの悲しみにすら気がつかずに

やっとわかったよ
本当の優しさ 「自分が傷つくことを怖れないこと」
大切なひと 信じること 信じることは 愛だってこと
まだ間に合うかな あたし 優しくなれるかな
唯 ひとつだけの祈りは あなたが笑って幸せに生きてくれること

 

 

みんなといっしょ
作詩:來住安珠(滋賀県彦根市・17歳)

みんなといっしょのことが できないぼく
みんなができることが できない
みんなといっしょのことが むつかしいぼく
みんなとおなじことが できない

みんなといっしょがいいの
みんなといっしょになりたいの
がっこうにいきたいの
おしごとがしたいの
みんなといっしょがすごいの
みんなといっしょにいきたいの
めいわくかけたくないの
やくにたちたいの

みんなができることを
ぼくはたすけてもらわないと いけない
たすけがいるぼくだけど
やくにたてることは あるのかな

みんなといっしょじゃないことが できるぼく
みんなができないことが できる
みんなといっしょじゃないことが とくいなぼく
みんなとちがうことが できる

みんなといっしょがいいの?
みんなといっしょになりたいの?
がっこうにいきたいの?
おしごとがしたいの?
みんなといっしょがすごいの?
みんなといっしょにいきたいの?
めいわくかけたくないの?
やくにたちたいの?

みんなができないことで
ぼくはみんなをたすけるの
みんなといっしょじゃない ぼくだから
みんなといっしょにいきて
やくにたてることがある

 

 

にじいろのようせいになりたい
作詩:酒井優和(長崎県西彼杵郡・8歳)

こころがきずついた人がいたら
お日さまのようせいになって
こころをあたためてあげたいな
しょんぼりしている人がいたら
水のようせいになって
お花のジュースをあげたいな
ないている人がいたら
木のようせいになって
ことりとうたをうたってあげたいな
わたしは にじいろのようせいになりたい
小さなようせいだけど やさしいにじいろのようせい
わたしは にじいろのようせいになりたい

ころんでないている人がいたら
花のようせいになって
お花のみつでなおしてあげたいな
さむそうにしている人がいたら
くものようせいになって
くもであたたかくしてあげたいな
みちにまよっている人がいたら
光のようせいになって
うちまで光をてらしてあげたいな
わたしは にじいろのようせいになりたい
小さなようせいだけど やさしいにじいろのようせい
わたしは にじいろのようせいになりたい

さみしそうな人がいたら
雪のようせいになって
ゆきだるまをつくってあげたいな
なやんでいる人がいたら
星のようせいになって
やさしくかがやいてあげたいな
はなればなれになっている人がいたら
風のようせいになって
ふうせんをとばしてあげたいな
わたしは にじいろのようせいになりたい
小さなようせいだけど やさしいにじいろのようせい
わたしは にじいろのようせいになりたい

 

 

春へ向かう
作詩:塚本正治(大阪市・57歳)

長い冬に向かいつつ
荷物を置いてふと思う
わが人生よ わが友よ
必ず春を見るんだと
あの日僕らは雨の中
震えながらも手をつないでた
震えながらも闘った
自分が自分であるために
握り締めた拳が大きな願いが
張り上げた声の中に夜明けを聞いた

僕らの命は春へ向かう
君と一緒に春へ向かう

赤い赤い夕焼けに
心染められ耳を澄ます
雪どけ水の遠き音が
雪どけ水の確かな音が
火となる僕らの情熱は
吹雪の中に灯(あかり)をともす
叫び声さえしるべとして
明日への道を照らしつつ
握り締めた拳に大きな願いが
張り上げた声の中に夜明けを聞いた

僕らの命は春へ向かう
君と一緒に春へ向かう

握り締めた拳に大きな願いが
張り上げた声の中に夜明けを聞いた

僕らの命は春へ向かう
君と一緒に春へ向かう

君と一緒に春へ向かう

 

 


作詩:林眞理奈(奈良市・26歳)

わからないんです
恋愛も友情も
わからないんです
笑顔の作り方さえも
ちゃんとした生き方なんて
わからないんです
それでも楽しいんです
生きたいんです
まちがっているのかもしれないけど
それでも生きたいんです

わからないんです
夢も希望も
わからないんです
輪の入り方さえも
ちゃんとした生き方なんて
わからないんです
それでもうれしいんです
生きたいんです
くさっているのかもしれないけど
それでも生きたいんです

 

 

幸輝(こうき) ~今(ここ)に導いてくれた恩師(あなた)へ~
作詩:松土琴葉(群馬県伊勢崎市・17歳)

前に並んだ貴方を見て
私の全てが崩れ落ちた
離退任式
突然見えた おわかれ
5年の感謝とまたよろしく
伝え走ると決めていたのに
悲しみの底 囚われた私は
ことばすら 出てこない

「あさって はしれません」
絞り出した弱音に
「走れます 走ります」
強い言葉は震えていた

ロープ握りあい走った
背中を押す追い風のなか
負けそうな向かい風のなか
積み上げてきた今までの
溢れて止まないこの思い
涙に隠れて言えないから
5年分の集大成
精一杯走る姿で
貴方に見せると誓うよ
明後日のラストレース

最後の朝は 透き通る青と
咲き始めた 桜の花
心なしか冷たい空気は
心の底を寂しく染める

「時間は誰にも平等」なのだと
貴方は何度も言っていましたね
今 残りわずかな二人の時間の
始めと終わりを縁取るこのゲート(にじ)は
貴方の瞳(め)にどう映っているのですか

ロープ握りあって走る
始まりの虹くぐり抜け
上り下りはこの5年のよう
辛い時も 嬉しい時も
支えてくれる声があった
喜び分けあう手があった
迎える拍手は紙吹雪
途切れることなく降ってくる
二人の想いをタスキに結び
おわりの虹をくぐりぬけよう

溢れ出すありがとう
互いの笑顔をにじませて
三月の優しい太陽は
二人の時間のおわりを
眩しいほどに鮮やかに

ロープ握って走り出す
貴方はもう隣にいない
向かう道は上り坂ばかり
負けてしまいそうな日がきても
貴方の言葉と貴方の笑顔
心に描いて超えていくよ

再会は笑顔が溢れるように
精一杯 駆け抜けるから

 

 

2さい 
作詩:与那覇里美(大阪市・36歳)

みぎて ひらひら  ひだりて ひらひら
「あか」「あお」「きいろ」
あなたの声が 手に乗ってやってくる
しらないでしょう
聞こえない ままが
こんなにうれしいこと

みぎて ひらひら  ひだりて ひらひら
「ちょうちょ」「花」「ひこうき」
あなたの目が 手に乗って語ってくる
しらないでしょう
聞こえない ままが
こんなに いやされること

みぎて ひらひら  ひだりて ひらひら
「いっしょ」「まって」「ちがう」
あなたの眉が 手に乗ってうごく
いつか知るでしょう
聞こえる あなたが
ままが 聞こえないこと

みぎて ひらひら  ひだりて ひらひら
「ありがとう」「ごめんなさい」
あなたが体ごと おはなししてる
聞こえない ままにも
ひびく そのこころ

おててで つむぐ こころと こころ
みんなが こんなふうに
いろいろな人と やさしくなれたら
聞こえても 聞こえなくても
きっと 笑いあえることでしょう

 

 

マイペース
作詩:渡辺美保(福島市・43歳)

あなたは言った どんな私を見てもマイペースでいいよと
ありがたい言葉だった
無力さを感じ 昔の自分と照らし合わせ苦しくなっていたから
ありがたい言葉だった
温もりを感じ 今の自分にしか出来ないことを
少しずつと焦らなくなったから
ありがたい言葉だった
私がまだ もがいていることを知っているかのように
期待しないでいてくれるから

どんな私でも どんな姿でも どんな事をしなくても
生きているだけでいいよと言ってくれるかのように
マイペースという言葉が 私の心の中を癒してくれる
期待しないでいてくれるなんて ついその言葉に甘えてしまう
期待されることが多かった私 もう頑張りすぎない

あなたは言った どんな私を見ても マイペースでいいよと
ありがたい言葉だった
絶望を感じ 私の生きてきた意味もない 経験が白紙だから
ありがたい言葉だった
温もりを感じ 今の自分にしか出来ないことを
少しずつと焦らなくなったから
ありがたい言葉だった
私がまだ 暗闇の中だと知っているかのように 
期待しないでいてくれるから

マイペース 
それは 自分の人生の歩む速度を 自分で決めていいということ
出来ること 出来ないことも 自分で決めていいということ

どんな私でも どんな姿でも どんな事をしなくても
生きているだけでいいよと 言ってくれるかのように
マイペースという言葉が 私の心の中を癒してくれる
期待しないでいてくれるなんて ついその言葉に甘えてしまう
期待されることが多かった私 もう頑張りすぎない