[終了しました]知財学習プログラムオンライン学習会

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 知的財産権は、表現を社会に向けて発信するときに必要となってくる、表現をまもりつつ広めていく方法としての基本ルール。遠い世界の話ではなく、私たちの身近な生活にもかかわる大切な問題です。
 たんぽぽの家では、楽しみながら知的財産や知的財産権について考える知財学習推進プロジェクトに取り組んでいます。今年度は、大きく2つ、取り組みました。ひとつは、「知財と学び」にテーマをしぼり、知財を学ぼうと動き出す手前にある、さまざまな興味や関心の入り口となるタブロイド誌を制作しました。知的財産や知的財産権を知ることでどんな可能性がひらけていくのかを伝え、さまざまな分野の現場における「知財と学び」について調査取材し、知財学習への動機づけへとつなげていくものです。今年度のもうひとつの取り組みとして、知的財産権学習カードゲーム「知財でポン!」の続編となる新作ゲームの開発を行いました。その名も「ちょいワルクリエイターず:ついついやっちゃう知財の侵害」。
 これらの今年度事業の成果報告を兼ねて、以下4回にわけてオンライン学習会を開催します。各回の後半は参加者のみなさんもまじえて自由にお話できる機会を設けます。1回のみの参加も可能です。どうぞふるってご参加ください。

お申し込みフォーム→こちら

 

開催概要

〇第1回 2021年3月2日(火)18:00〜20:00
 表現をめぐる知的財産権について考える~基礎編~
 講師:森下静香(Good Job!センター香芝・センター長)

〇第2回 2021年3月3日(水)18:00〜20:00
 障害のある人のアート活動の権利保護とマーケットとのかかわり
 講師:柴崎由美子(NPO法人エイブル・アート・ジャパン 代表 / エイブルアート・カンパニー東北事務局)
    宮本典子(office N 代表 / 一般社団法人日本現代美術振興協会 事務局長)
 

〇第3回 2021年3月9日(火)18:00〜20:00
 ゲームを通じて知財の仕組みについて学ぶ
 講師:橋本高志(社会福祉法人ぷろぼの職員 / ボードゲームデザイナー)
    鈴木恵美(コミケマンガ原作者 / 弁護士 / 大学講師 / ボードゲームデザイナー)
    荒木勇輝(NPO法人Board Game Japan 副代表 / ボードゲームデザイナー)

〇第4回 2021年3月10日(水)18:00〜20:00
 野菜とファッション~小規模生産者と消費者をつなぐブランド戦略最前線~
 講師:香坂玲(名古屋大学大学院 環境学研究科 教授)
    永井幸輔(弁護士 / Arts and Law / Creative Commons Japan)

 

開催方法:オンライン配信(Zoom)
定  員:各回30名(申し込み先着順)
参 加 費:無料
主  催:文化庁、一般財団法人たんぽぽの家

お申込み:お申し込みフォームに必要事項をご記入のうえ送信してください。

参加するセミナー開催日の2日前までにお申し込みください(定員を超えた場合は期日より前に締め切ることがあります)。各回の開催日の前日に、お知らせいただいたメールアドレス宛に、ZoomのURLを送信いたします。もし開催日当日になってもメールが届かない場合は、お手数ですが下記までご連絡ください。

お問い合わせ:一般財団法人たんぽぽの家 知財学習推進プロジェクト事務局 
Tel: 0742-43-7055 Fax: 0742-49-5501 e-mail: chizai■popo.or.jp(■を@に代えて送信ください)

*本イベントは、令和2年度 文化庁 障害者芸術文化活動普及支援事業(文化芸術による共生社会の推進を含む)「障害のある人の表現と知的財産権に関する知財学習プログラムの開発」により実施いたします。
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各回詳細

〇第1回 表現をめぐる知的財産権について考える~基礎編~
 日時:2021年3月2日(火)18:00〜20:00

 たんぽぽの家では、障害のある人たちのアート活動を社会に発信する方法として、作品の販売や商品化などに取り組んできました。2007 年には障害のある人のアートを企業などが広報や商品に二次使用できる仕組み「エイブルアート・カンパニー」を設立しました。そうしたなかで、知財にかかわる契約をかわすことも多くなり、知財は企業や海外などできかれるような遠い世界の話ではなく、身近な、かつ人権にもかかわる大切な問題だと気づきました。また、こうした課題は福祉に携わる私たちだけではなく、個人のクリエイターや伝統工芸などにかかわるメーカー、ファブスペースなどでのものづくりなどにも共通のものだということがわかりました。そこで、私たちは、知財になじみのない人たちが気軽に学ぶことができる学習プログラムの開発を行ってきました。
 知財や法について学ぶことは一見難しいことですが、大切なのはどのように活用・運用するかだと思います。本学習会では、私たちたんぽぽの家が、障害のある人と表現することを通して、社会とつながる仕組みづくりに取り組むなかで、悩んだり、専門家や周囲に相談したりしながら学んできた、知的財産権にまつわることで大切に思っている基礎的な事柄をお伝えしたいと思います。ぜひご参加いただき、後半のフリーディスカッションで、近況報告、活発な意見交換を行うことができたらと思います。

タイムテーブル:
18:00-18:10 事業報告(たんぽぽの家)
18:10-19:10 表現をめぐる知的財産権について考える(森下静香)
19:10-19:20 休憩 兼 質問受付タイム
19:20-20:00 フリーディスカッション
(進行:Good Job!センター香芝・副センター長・藤井克英)

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森下静香
Good Job!センター香芝センター長。たんぽぽの家にて、障害のある人の芸術文化活動の支援や調査研究、アーロプロジェクトの企画運営、医療や福祉などのケアの現場におけるアートの活動の調査を行う。2012年より、アート、デザイン、ビジネス、福祉の分野をこえて新しい仕事を提案するGood Job!プロジェクトに取り組む。Good Job!プロジェクトでは、2016年度グッドデザイン賞にて、金賞受賞。

 


〇第2回 障害のある人のアート活動の権利保護とマーケットとのかかわり
 日時:2021年3月3日(水)18:00〜20:00

 中間支援の濃淡で、成果が出る、出ないが左右されがちな、障害のある人のアート活動と「お金」のことについて考えるためのセミナーです。
 2014年より、各都道府県に、障害のある人のアート活動の相談窓口や研修会、発表機会の創出などを行う支援センターが設けられ、障害のある人のアート活動にまつわる権利保護についての取り組みが積み重ねられてきました。NPO法人エイブル・アート・ジャパン の柴崎由美子さんに、1990年代から2010年代にかけて企業や行政の障害者アートへの支援方法の変化にともなって、障害のある人の芸術文化とお金の関係が、どのように変遷してきたのか、実践を通じて感じ考えてきたことをお話いただきます。原画や複製画の売上、著作権使用料、講演会謝金、奨学金などのテーマにふれることでしょう。また2015年からは、障害のある人が制作した作品を現代アート作品としてアートマーケットに紹介するプロジェクト「capacious」が大阪府で始まりました。本プロジェクトを推進する宮本典子さんに、これまで行ってきた試みとアートマーケットの現状について解説いただいたうえで、これからどうすれば、福祉の枠にともすれば閉じ込められがちな「障害者アート」というくくりを突破し、現代アートの文脈で障害のある人の作品を捉えることができるようになると思うのか、お話いただきます。
 ライセンスビジネスを展開しながら原画の展示販売の大切も知る柴崎さんと、あくまで原画の展示販売を目的に事業展開しつつグッズなどの二次利用についても関心を寄せる宮本さん。お二人の話を聞いたあと、後半のフリーディスカッションの場では、参加者のみなさんとともに、ゼロから事業を立ち上げることや障害者アートのこれからを、マーケットとのかかわりと権利保護という2つの軸から考えていきたいと思います。 

タイムテーブル:
18:00-18:10 事業報告(たんぽぽの家)
18:10-18:40 障害のある人の芸術文化とお金の関係~1997-2021の25年から考える(柴崎由美子)
18:40-19:10 「capacious」というプロジェクトを通じて考えたこと(宮本典子)
19:10-19:20 休憩 兼 質問受付タイム
19:20-20:00 フリーディスカッション
(進行:一般財団法人たんぽぽの家 常務理事・岡部太郎)

 

柴崎由美子
宮城県仙台市生まれ。1997 年より障がいのある人たちの表現活動にかかわる。たんぽぽの家アートセンターHANA(奈良)のディレクター(2004年〜2009 年)を経て、障がいのある人のアートを社会に発信し仕事につなげる「エイブルアート・カンパニー」設立・事務局(2007 年〜)。障害者芸術活動支援センターを宮城で設立・運営(2014 年〜)。障がいのある人とともに今そこにないプログラムをつくること、東日本大震災からの復興支援活動がライフワーク。

 

宮本典子
office N 代表 / 一般社団法人日本現代美術振興協会 事務局長。1980年茨城県生まれ。大学で建築を学んだ後、約6年現代美術ギャラリーに勤務。展覧会の企画運営の他、現代美術のアートフェア「ART OSAKA」の事務局担当を行う。2011年office Nとして独立。2015年~大阪府の障がいのある方のアート作品をマーケットに紹介するプロジェクト「capacious」にも取り組む。

 


〇第3回 ゲームを通じて知財の仕組みについて学ぶ
 日時:2021年3月9日(火)18:00〜20:00

 たんぽぽの家では、2018年に、知財を活用してアートを世の中に発信する全員協力型のゲーム、「知財でポン!:まもってひろげてアートを発信」を開発し、2019年から販売を始めました。参加者同士の配慮や協力を大切に、楽しみつつ、知財の運用を学ぶことがねらいのゲームです。さらに今年度は続編となる新作ゲームの開発に取り組みました。その名も「ちょいワルクリエイターず:ついついやっちゃう知財の侵害」。前作ゲームとはうってかわり、曲者ぞろいのクリエイターがさまざまな手段を駆使して自分の知的財産を世の中に広めるために繰り広げる対戦型のゲームです。悪徳業者や産業スパイたちも暗躍するなかで、権利保護や権利侵害について体感的に学べます。
 事業報告では、今年度制作した新作ゲーム「ちょいワルクリエイターず」の制作意図や制作プロセス、初代開発ゲーム「知財でポン!」との関係性などをご説明します。講師に、ゲームを用いた学習機会を提供しているボードゲームデザイナー、橋本高志さん、鈴木恵美さん、荒木勇輝さんをお招きしています。橋本さんは「知財でポン!」や「ちょいワルクリエイターず」の監修者。できたてほやほやのゲームを、本邦初、お披露目いただきます。著作権ボードゲームを開発し、大学でも著作権に関する授業を行っている弁護士の鈴木さんと、学校教育現場をよくしていきたいという思いから、子どもや教職員向けにボードゲームを開発した荒木さんには、それぞれ開発されたゲームについてご紹介いただくとともに、ゲームだからこそできる学びにフォーカスしたお話をしていただきます。その後のフリーディスカッションでは、ゲームを通じて知財の仕組みを学ぶことや教えることの意義(座学とはまた違った価値)について語り合います。

タイムテーブル:
18:00-18:10 事業報告(たんぽぽの家)
18:10-18:55 新作ゲーム「ちょいワルクリエイターず」のお披露目(橋本高志)
18:55-19:00 休憩
19:00-19:15 著作権ボードゲーム fun©’s Treeの紹介(鈴木恵美)
19:15-19:30 ボードゲーム、We Schoolとセンセイトークの紹介(荒木勇輝)
19:30-20:00 フリーディスカッション
(進行:一般財団法人たんぽぽの家 スタッフ・大井卓也)

橋本高志
社会福祉法人ぷろぼの職員。「ちょいワルクリエイターず」のゲームデザイン担当。職場では就労支援プログラム「plus GAME」を主宰。訓練としてアナログゲームの制作や、専門家と連携してアナログゲームによる職業適性の見極め等を行っている。知財学習のツールとしてのアナログゲーム「知財でポン!」(制作・発行 一般財団法人たんぽぽの家)の開発にも、ゲームデザインとして関わった。

 

 

鈴木恵美
ゲームデザイナー / コミケマンガ原作者 / 弁護士 / 大学講師
■モットー:「明るい時に会いたくなる弁護士」~なにか、の前からご一緒しましょう~
■ゲーム製作日記(note
■「お弁当になることができないゆるキャラ」(共著『いろいろあるコミュニケーションの社会学』25章)執筆
■大学講師:中京大学 法学部ゼミ(知的財産権)
愛知淑徳大学 創造表現学部 講師(知的財産権)
名古屋工業大学 産業経営リテラシー科目 講師(知的財産権)
■これからの著作権教育(博報堂雑誌「広告」著作:対談note

荒木勇輝
1984年京都府和束町生まれ。大学卒業後に新聞記者を経て、2014年にNPO法人寺子屋プロジェクト(Tera school)を設立。京都を中心に全国各地で、学びの場づくりやそれを支える地域の人たちのコミュニティづくりに取り組む。また、学習要素を含むボードゲームを開発するNPO法人Board Game Japanの副代表を務め、ボードゲームデザイナーとしても活動中。

 


〇第4回 野菜とファッション:小規模生産者と消費者をつなぐブランド戦略最前線
 日時:2021年3月10日(水)18:00〜20:00

 今年度制作したタブロイド誌では、伝統野菜などの農産物とファッションに関する特集インタビュー記事が掲載されています。一見何も関係ないように思われる野菜とファッションですが、知財という観点から見るとたくさんの共通点があります。まず、もともとどちらも他者との協働、消費のされ方如何(どう料理されるか、どう着こなされるか)で価値が生まれるなど、独占するのが難しいオープンな特質を持っているということ。しかし、ファストフード、ファストファッションなどの流入により、それぞれなんらかのかたちで保護を必要とする分野でもあること。
 本学習会にはタブロイドの特集記事にご登場いただいたお二人を講師にお招きしています。環境マネジメントがご専門の香坂玲さんには、伝統野菜などの農産物を題材にして、遺伝的資源の保護や、地域団体商標や地理的表示など地域振興にまつわる知財の意義について、そして、ファッション&ローを牽引されている弁護士の永井幸輔さんには、オープン戦略がそもそも当たり前であるファッションと知財の関係性について、それぞれわかりやすく解説していただきます。その後のフリーディスカッションでは、私たちの生活のごく身近にある、これらの共同的な財産をどのようにブランド価値として認め、どこまで保護し、後世につなぐかたちで広めていったらいいかについて考えていきます。ものづくりやアート活動を行う福祉施設など、小規模生産者が、自分たちの活動をどうブランディングし、地域とともに共生するヒントを得ることができたらと思います。

タイムテーブル:
18:00-18:10 事業報告(たんぽぽの家)
18:10-18:40 地域社会と自然風土が醸成する「農」の知財を考える(香坂玲)
18:40-19:10 ファッションにおける知財の試み(永井幸輔)
19:10-19:20 休憩 兼 質問受付タイム
19:20-20:00 フリーディスカッション
(進行:一般財団法人たんぽぽの家 スタッフ・後安美紀)

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香坂玲
名古屋大学大学院 環境学研究科 教授。東京大学農学部卒業。ハンガリーの中東欧地域環境センター勤務後、英国で修士、ドイツ・フライブルグ大学の環境森林学部で博士号取得。国連環境計画生物多様性条約事務局勤務後に複数の大学を経て現職。日本学術会議連携会員(環境学)。近著に、「伝統野菜の今」「地域再生逆境から生まれる新たな試み」「有機農業で変わる食と暮らし――ヨーロッパの現場から」(岩波ブックレット)など。

 

 

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永井幸輔
弁護士。Creative Commons Japan理事。Arts and Law所属。美術・演劇・ファッション・出版・映画・音楽などの文化芸術とインターネットの交錯する領域を中心に、クリエイティブに関わる人々への法務アドバイスを提供している。インターネット関連会社にて、ブロックチェーンに関わる事業企画にも従事。