45周年記念わたぼうし音楽祭 作詩・作曲の部入選作品

45周年記念わたぼうし音楽祭

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やさしい時間  
作詩:太田 純平(東京都町田市・29歳)
作曲:古賀 聡子(東京都西東京市・50歳)

耳もとで「おはよう」「今日はいけるかな?」とやさしい声で起こされる
僕に問いかけながら窓を開けて僕の顔に朝の空気を詰め込んでくる
でも 僕はいつも起こされて不機嫌さ

そして僕は今日も元気に起きれたことを朝日に感謝する

やさしい手は僕に洋服を着せてくれる
後ろの方で母さんが通所の準備をしている

母さんのバタバタとヘルパーさんのやさしさが朝のエネルギーになる

夕方 僕は通所から帰ってきて寝落ちする
大きな声で玄関から「じゅんくーん!ひまわり隊だよ!お風呂だよー!」
とおばちゃんたちがドドッと入ってきます

ウルサイ時間の始まりです
おばちゃんの声は何であんなに大きいのだろう?

とにかくウルサイ…
そして面白い!
井戸端会議が始まります

でもね そんな時にも僕の調子を絶対に見逃さないのさ
「ママー 胃残(いざん)を引いて」
「今日はお腹が痛いから お風呂どうする?」
母さんに聞きます

いい加減な母さんは大抵 「お風呂入って良いよ」と言います

「おいおい…辛いのは僕だよ…」
と言いたいのに声が出ない

そんな時 おばちゃん達は抱っこで僕をお風呂に入れてくれます
リフトだとお風呂までの距離が長いから寒いんだよね

僕はひまわり隊にいつも感謝しています
若くてカワイイお姉さんは一人もいないけど
逞しいおばちゃん達も僕は好きだなぁ

僕の1日は寝ても覚めても「ひまわり」ばかり

ひまわり隊がやってくる
そんな時間が楽しくて やさしい時間になります

 

 

Keep On Smiling~笑顔の花を咲かせよう~ 
作詩:御多福豆(三重県亀山市・63歳)
作曲:吉田 洋(奈良市・54歳)

もしも私が 大空を飛ぶ鳥ならば
もう自由に 羽ばたけない
寝たきりになる 宿命
進行する 治せない
桜の花も グレーに見えた
鬱の世界をさまよい
生きる希望が 消えかけた
底なし沼を あがいてた
しぶとく生き抜いてみよう
クヨクヨしてたら もったいない
Stay Positive 
Keep On Smiling

もしも私が 海原を泳ぐ魚ならば
もうスイスイ 泳げない
出来たことが 出来なくなる
進行にブレーキをかけよう
リハビリが 仕事になった
ダブル杖で 動き回り
パラアスリート気分だった
病魔と闘い もがいてた
あっぱれに生きてみたい
笑顔は心の薬です
Stay Positive 
Keep On Smiling

もしも私が 草原を駆ける動物ならば
もう風を切って 走れない
体は 壊れ続けていった
手足は でくの坊になった
ありのままを 受け入れたら
幸せなことに気がついた
主婦失格になっても
みんなに支えられている
ありがとうを伝えたい
笑顔の花を 咲かせよう
Stay Positive 
Keep On Smiling
笑う門には 福来たる
Stay Positive 
Keep On Smiling

 

 

STANDING
作詩・作曲:甲斐 聖二(東京都台東区・59歳)

湧き上る 歓声の渦の中に君は歩きだす
汗にまみれ 涙に濡れた日々を思い出せば
力にできる
君の夢を塞ぐ いくつものハードルを
ためらう事はない 高く越えて行け

誰よりも 
君は君をもっともっと信じて 倒れても
STANDING 挫けない勇気に強くなれ

君たちの戦いは 傷付け合う事じゃないだろう
最後に手と手を 重ね合えば悔しさも絆へ
君なら出来る
君の胸を打つ 鼓動さえ聞こえ来る
飛び込め水の中 君はマーメイド

誰よりも 
君は君をもっともっと信じて 倒れても
STANDING その痛み優しさに変えて

誰よりも 
君は君をもっともっと信じて 倒れても
STANDING 挫けない勇気に強くなれ

 

 

Each life~それぞれのメロディ  
作詩:呼都玻(愛媛県松山市)
作曲:吉田 達矢(京都市・32歳)

弱さと不安が 心を廻(めぐ)る
寄せては返す まるで波に似て
立ち上がれないと 深い淵にいても
励ましてくれた そこに歌があった

風が そよぐ時
大地を 踏む時
鼓動と一緒に
響くメロディ

「そうだ 私は ここに生きている」
数々の場面 振り返る想い
変わる事がない 染まらない心は
後悔もあるけど 歩いて来た道のり

私と おんなじ 気持ちで もしも
いるなら君を 余計な事とは
分かってはいても 出来るだけの力
支えたい強く 思っている いつも

ダメと嘆く時
信じて それまで
努力を してきた
汗と涙を

「そうだ 私は ここに生きている」
諦めず前へ 立ち上がる勇気
持ち続ける事 終わらないストーリー
主人公は いつでも 君自身なんだと

「そうだ 私は ここに生きている」
授かった生(せい)に誇らしく居よう
全ての人達 意味がある存在
誰一人 欠けても 成る事が 出来ない

それぞれが奏でる それぞれの人生

 

 

My parents    
作詩:小林 聡(大阪市・54歳)
作曲:加藤 和広(群馬県前橋市・59歳)

泣きながら生まれてくるはずだった
だけど泣いたのは周りの方だった
僕の人生は人を悲しませる事から始まった

自分を責め続ける母
何度も僕を抱いて踏切前に立った
現実を受け入れられない父
ただがむしゃらに働き続けた

絶望の暗闇 手繰りで探す微かな光
僕が歩き始め 家族も前を向きだした

だけど歩き始めた場所は
スタートラインさえ遥か遠い

いくつもの偶然が重なり
生まれてきた奇蹟の命
二人の汗と涙で色付けてくれた

命を包む身体の形は十人十色
身体が不自由でも心の自由は奪われない

救われた命 季節が進むたび
幸せコインが胸に落ちていく
できることなら周りを笑顔にして
僕の人生を終わらせたい 

「ありがとう」だけじゃ
この気持ち伝えきれない

 

 

ペチ  
作詩:白毛由美子(埼玉県熊谷市・45歳)
作曲:河野 由実(奈良市・57歳)

父が死んだ
アルコール依存症だった
父は私を「ペチ」と呼んだ
「ペチ ごみを捨ててこい」
「ペチ 肩をもめ」
「ペチ おやすみ」
「ペチ どうもありがとう」
ペチ ペチ ペチ ペチ…
父の口ぐせは「ペチ」だった

父は私を心配していた
私が精神障がいだったから
彼の話になると決まって言った
「ペチ あんなのどこがいいんだ」
「ペチ 将来どうするんだ」
「ペチ 結婚はするのか」
「ペチ 孫の顔が見たい」
ペチ ペチ ペチ ペチ…
時には口うるさく言われた

私は父を愛していた
どんな父も大好きだった
「ペチ」と言ってくれることが嬉しかった
私 見ていてくれてる?
私 さびしいよ
私 結婚したんだよ
私 幸せになったんだよ
ペチ ペチ ペチ ペチ…
ねえ もう一回言ってよ

もう 何を言っても何の言葉も
返ってこないけれど
今は「ペチ」という声だけが
頭の中に響いているよ
ありがとう お父さん

 

 

ろう学校から巣立つ私のはじめの言葉  
作詩:森 健司(大阪府茨木市・15歳)
作曲:川原一紗(熊本県玉名市・41歳)

なんて言ったらいいのかな
「実はさぁ」って言い始めようかな
それとも誰か気付いてくれるかな
「私には障がいがあるけど 
あなたたちとの障がいにはならないから」って
言えるのかな
でもそんなことないよね
絶対ないよね
どうしようかな 
自己紹介

1人の友だちとして受け入れてくれるかな
独りで過ごすなんてさみしいよね
誰かひとりでいいから
友だちになってくれないかな

「これからたくさんお世話になります」って
思いきって言おうかな
新しく迎える春だから
私のこと本当のこと
言わないといけないから
正直に伝えるから
聞いてほしい
私をさらけだす
自己紹介

「私 みんなの声をできるだけ聞きたいから
補聴器をつけてるよ」

それから
「本当はこれからの生活が
すごく楽しみだ」ってことも
伝えようかな
本当のことだから

 

 

あなたの心にそっと感謝して  
作詩:山本 弘樹(福井市・50歳)
作曲:渡邉 麻菜美(岐阜県加茂郡・22歳)

今 あなたは臨床室で待っている
私のあんまを待っている
私はあなたの事を思いながら 今日もプランを考える
幾度となく話しているあなたとの会話が 頭の中を駆け巡る

さぁ あなたとご対面
表情は見えないけれど
あなたは陽だまりのようなあたたかさで やさしく語りかけてくれる
あなたは 「最近ね…」と話し出し
私はその言葉にぬくもりを感じながら
施術を始める

1つ1つゆっくりと 骨と筋肉を確かめながら
タオルごしに皮膚をさすって行き 親指で静かに押していく 
高まる緊張感
柔らかくなった所を丹念に揉んで行く
私のあんまはどうですか 
あなたはうなずいて 私のあんまに手を差し伸べてくれる
会話から時折出てくる指摘が 私の先生にもなってくれる
そして私のあんまの技術を 更に引き出してくれる
表情は見えないけれど 
お母さんのように やさしく教えてくれてありがとう
花のつぼみがパァッと開いたように 私のあんまの世界が広がった

社会復帰に夢のせて 
出来ると信じて
私はあきらめない
目が見えないと できないことが多いけど
私に出来るたった1つの優しいあんま
あなたを元気にできるあんま
未来もあなたを癒やせるあんま師になりたい

表情は見えないけれど
あなたの心にそっと感謝して
あなたにあんまを1つご注文頂けます様に