第43回わたぼうし音楽祭「作詩の部」入選作品

 作品名 作詩者
 樹になった鳥 新井 美妃  群馬県藤岡市・48歳
 お料理しましょ!
 〜チームけーこりんのお話〜
伊藤 圭子  東京都江戸川区・55歳
 頑張れ自分 梅本 沙也華  大阪市・15歳
 家族 大矢 治美  千葉市・44歳
 生活の中で聞こえる音 岸本 妙子  福井市・58歳
 三十秒を切る 田名部 寛乃  青森県八戸市・17歳
 願いが叶いますように フォルティッシモ  滋賀県高島市・37歳
 直っち 吉岡 文彦  長崎市・49歳

 

樹になった鳥
作詩:新井美妃(群馬県藤岡市・48歳)

不自由を 知らなかった頃
本当の自由も わからなかった
日常は当たり前で
当然のように 続いていた
行きたい時に 行きたい場所へ
孤独さえも 清々しく
夢は 現実のすぐ先に
自分次第で なんでもできた
あの日 あの瞬間(とき) 翼が折れるまで
空はただ青く 均一に広がっていた

飛べなくなった鳥は 空を見上げる
もう二度と 辿り着けない遠い所
ほんとうに……?
幾千の涙が 大地を濡らした
嵐の中で 耐えるうちに
足に根が生え 翼は枝に
いつしか鳥は 樹になった
ありのままを 受け入れて
飛べない空に 心を飛ばす
世界が新たに 目覚め始める

悲しみは 優しさ深め
苦しみは 強さ育み
支えあう 絆の中で
生きるとは こんなにも
つらく いとおしい
伸ばした枝は 変幻(へんげん)空(くう)を纏(まと)い
風に葉を靡(なび)かせて 樹は
今日を 羽ばたいている
本当の自由を 感じながら
花咲く明日を 信じながら

 

 

お料理しましょ!~チームけーこりんのお話~
作詩:伊藤圭子(東京都江戸川区・55歳)

部屋の窓に夕陽が映えて来たら
私は小さいキッチンに立つ
お料理しましょ!
チームけーこりんのサポーター
ひとりひとりに
私の味をうまく伝えられるかな?
お鍋でお湯を沸かしながら
戦闘態勢女子2人

だいこんは少し厚めのイチョウ切り
ごぼうはささがきで
鉛筆を削って行くようにね?
豚コマ肉は 一口大で
こんにゃくや豆腐は手でちぎってね!
ニンジンは薄く小さく(実は苦手!)
長ネギは薬味ていど
小さいお皿に入れてね!

大切なのは教えるんじゃなく 伝えて行くのよ
あなたのこと 私のこと
だからね! 手先だけは切らないで

部屋の明かりが目立ち始めたら
私の味は理想に近づいて来て
お料理しましょ!
チームけーこりんのメンバー
誰もがステキ女子
日替りでワイワイ!笑いが絶えない
女子力上昇無我夢中

切った物を油で軽く炒め
ぐらぐらいってるお鍋に投げ込み
出汁入り味噌をおたまで溶かしててね!
さて味見・・・私の出番よ!
うーん!美味しい 今日も大成功
わたし特製の具だくさん豚(とん)汁

大切なのは育てるんじゃない 育ち合う
あなたがいて わたしがいる
だからね!やけどだけは気をつけて

これからもどうぞ…よろしくね!

 

 

頑張れ自分
作詩:梅本沙也華(大阪市・15歳)

私は高校生になる 
新しい人生に立ち向かう
でも私は赤ちゃんの時から 
ずっと聞こえる学校に行ったことがない
いきなり聞こえる学校に行って 
何ができるか分からない
初めてでソワソワ
口で話す会話 
読み取れない
何を話せばいいのか 
どういうふうに声をかければいいのか
わからない 
だけど
やってみるんだ 
いや 
やってやるんだ
苦しいことだって 
つらいことだって
自分だけじゃない 
みんなと同じ
乗り越えるんだ 
高い壁であっても
私はやれる 
出来ると信じて
挑戦するんだ 
諦めない
負けるな自分
不安だらけだけど 
やってみるんだ 
いや 
やってやるんだ
弱い自分から
新しい自分に変わるためにも 
強くなろう
きっとできる 
どんなことにだって乗り越えられる
前に進むんだ 
どんなことにだって耐えられる
頑張れ 自分

 

 

家族
作詩:大矢治美(千葉市・44歳)

時間 約束 守れない
そう 指摘され ショック
姿勢 良くなり 小走りも
減ったと 思ってた 忘れること
ただ 慣れただけ
物忘れ 勘違い
脳が 傷ついたから
かなり 前の話
今の 私が 私の 人格
コントロールできますように

妻 母として 生きている
自分だけの ことじゃない
笑って そつなく こなそう
家族、地域、学校、習い事
輝けるように
生活 快適に
笑顔 幸せを 守る
それが 私の 使命
君たち 愛されていると
感じられますように

見えない障害と 家族と 共に 生きていく
迷惑を かけること あるだろう
それは お互いに 支え合おう
人に 頼りすぎないように
いろんな人が いること 
自然に 学べたらいい
君たちに 必要と されている 幸せ
全てのこと 笑顔で 受け入れられますように

 

 

生活の中で聞こえる音
作詩:岸本妙子(福井市・58歳)

チュンチュンと鳥の声
朝が来たなぁー
一日が始まる
シュンシュンとお湯の沸く音
コポコポ コーヒーメーカーの音
まろやかな匂い
今日も一日穏やかな一日でありますように

一歩外に出るとまぶしい太陽の中
ピッポピッポ信号の音
渡ってバス停へ一直線
添乗員さんの「おはよう」の声
私の「おはようございます」の声
ピンポンと盲学校の入り口の音
私の勉強の一日が始まる
鉛筆をカリカリカリ
さあがんばろう

 

 

三十秒を切る
作詩:田名部寛乃(青森県八戸市・17歳)

いつも心の中で思っている
切ろう切ろうと思っている
練習しても練習しても
三十秒を切れないままの百メートル
車いすで陸上を始めて十年
一度も出したことのないタイム
大会で何度金メダルをとっても
超えられないままの三十秒の壁

人と比べても仕方ないこの世界だから
メダルよりタイム 自分自身
言い訳を考えても 無力さを嘆いても
自分自身には勝てない

いつも心の中で思っている
切ろう切ろうと思っている
挑戦しても挑戦しても
三十秒を切れないままの百メートル
あの時は手術で入院していて
あの時は練習に行く時間がなくて
思い通りに練習できなかった
そういうことにしてきた三十秒の壁

人と比べても仕方ないこの世界だから
メダルよりタイム 自分自身
言い訳を考えても 無力さを嘆いても
自分自身には勝てない

いつか三十秒の壁を越えたら
自分に勝った自分を認めよう
そして次の目標に向かっていこう

 

 

願いが叶いますように
作詩:フォルティッシモ(滋賀県高島市・37歳)

何だか現実が嘘みたいな気がして
私は今どこにいるのだろうか
元通りに治ることはもうないのだ
だから決めた
無理はしないと
自分の生命(いのち)を維持することを目標にして
できなくなったことをもう取り戻そうとしないで

レールからはずれたとき
本当の自分が顔を出していた
もう傷つくのは嫌だと 心を閉ざし
それまでできたこともできなくなった
だけど気がついた
私は自分をあきらめていることが悲しかったのだと

私は暗い闇の中
遠くあかりのさす方を見るの

折れてしまった心で
つなわたりみたいな毎日を生きているけれど
それでも私は願うの
生きていきたいと
残されている力で 
できるだけのことをしていれば
きっと大丈夫 神様はちゃんと見ているはず

あせらないで ゆっくり病気をして
どれだけのことを失っても
その時の私にとって過酷だっただけ
だけどふり返ってみたら
一生懸命に生きてきた足跡があった
だから大丈夫
今をあきらめなければ

私はまぶしい光の中
願いが叶いますように

 

 

直っち
作詩:吉岡文彦(長崎市・49歳)

直っち
お前と出会って、もう32年になっとかぁ…
大学のボランティアサークルにいた時に出会うた時は 俺もお前も十代やった
そいが、今年お前は4回目の年男。
俺は五十路に入るもんなぁ…

初めて出会うた時、
色白で「女ん子か?」と思うた直っち

ばってん、素顔は気が強うして、
「横道坊主(おうどぼんず)」
「生意気か奴」ても思うたばってん、
俺も「横道坊主」やったけん、フィーリングが合い
今でも仲良うさしてもろうとる

小柄で女形顔(おやまがお)、色白な直っち。
「色黒で大兵肥満な熊」な俺

色々馬鹿話もしたし、色々な所に行ったし、ホークスん話でも盛り上がった
9年前、俺が「アスペルガー症候群」と診断され、障害者ん仲間入りばした時、
直っちに告白したら「ようやく、自分で気づいたや」と言ったお前
まさか、俺ん障害ば見抜いとったとはな…

脳性麻痺で、車椅子に乗り、舌足らずん口調でようしゃべる直っち
障害が目に見えんばってん、こだわりん強さと落ち着きんなさはある俺

これからも、仲良うすうで!!
お互いに、ホークス応援、燃ゆうで!!